2014年 05月 06日
The StrutsとLuke Spillerに夢中 |
僕は小5でビートルズを聴き始めて、小6の時に出会った同級生にマイク・オールドフィールドやクィーンを聴かされ、大きな衝撃を受けてハードロックやプログレッシブロックを聴き始めた。その後中学から高校にかけてロック漬けの日々を過ごし、70年代ロックを聴きまくって過ごした。
しかし、80年代に入ってから、洋楽の新人アーティストからロック色は薄れポップス色が強くなっていき、従来からのアーティストは聴き続けたが、余り新人アーティストに興味を持てなくなって行った。むしろ佐野元春のデビューに衝撃を受け、興味は邦楽に移って行った。
ところが、久々に夢中になれる新人アーティストに出会う事が出来た。もう、新人アーティストにこんなに胸をときめかせる様な事はないだろうと思っていたので、自分でも意外な程だが、それだけに飛び上がりたくなる程、嬉しい。
新人アーティストにこれだけ夢中になったのは、洋楽アーティストでは多分チープトリック以来だし、邦楽アーティストも含めるとDragon Ash、またはインディーズアーティストだが同世代のストロオズ以来だろう。
それは、イギリスの新人ロックバンド、The Strutsと、そのヴォーカリスト、Luke Spillerだ。
Kiss This EP / The Struts in iTunes Store
きっかけは、マイク・オールドフィールドの6年振りの新作発売のニュースだった。
マイク・オールドフィールドの新作『Man On The Rocks』から「Sailing」のPVが公開
それはマイクにとって、23年振りのヴォーカルナンバーのみのアルバムであり、マイク本人がヴォーカルを務めたその23年前の作品『Heaven's Open』を除けば、1人のヴォーカリストをアルバム全曲に起用した初のアルバムという異例なものだった。
その異例なアルバムに起用されたヴォーカリストはよほどの実力派に違いないと思ったら、それは意外な程に若くあどけない表情の青年だった。
しかし、確かに歌は抜群に上手いし、若いのに超大物のマイクとの共演も堂々としたもので、ただ者ではないヴォーカリストなのは間違いないと思った。一体何者だろうと思ったのだが、マイク新作のニュース記事からは、まだアルバムデビュー前の新人バンドThe StrutsのヴォーカルでLuke Spillerという名前だという事しか分からなかった。
そこで、情報を集め始めるのだが、実はこの時はアマゾンのマイク新作のレビューで「フレディ・マーキュリー似」と書かれていた事に、僕は「確かにフレディに似ていると言いたくなる位凄いヴォーカリストだというのは分かるけど、それ程似ている訳じゃないんじゃない?」と少々反発を覚えていた。
僕にとってクィーンは特別なバンドであり、フレディは特別なヴォーカリストだった。だから、そう簡単にフレディと似てるなんて言って欲しくないという気持ちが働いたとのだと思う。特に『Sailing』のPVで「こんなあどけない青年が?」と驚かされた時の印象で、僕にはフレディというより、ベイシティローラーズのメンバーの誰かっていうイメージじゃない?と感じられた。特に誰に似ているという訳ではないが、敢えて言うなら、レスリー・マッコーエンとイアン・ミッチェルを足して2で割った様な感じじゃないかと思っていたのだ。
ただ、今になって見てみると、このPVでも時にはドキッとする位、フレディ・マーキュリーに似ているカットもある。しかし、このとき僕はまだ第一印象に縛られていたのか、自分にとって唯一無二の存在であるフレディの存在が大き過ぎて認めたくないという心理が働いていたのか、それには気付いていなかった。
いずれにしても、ルーク・スピラーというヴォーカリストに魅せられた僕は、彼の事をもっと知りたいという思いと、ストラッツというバンドではどんな曲をやっているのかという思いから、YouTubeを検索して彼等のPVを発見し、マイクの新曲を聴いた時以上の衝撃を受ける事になる。
僕が最初にストラッツのPVを検索したのは、2014年3月21日。この時点ではストラッツは2曲のシングルをリリース済みで、『Kiss This EP』はまだリリース前であり、先行して『Kiss This』のPVが公開されたばかりで、リリース曲のPVが観られるのは3曲だけだった。
先ず驚いたのは、自分のイメージしていた現在の洋楽とは全く異なるロックテイストの強さだった。そして、ロックヴォーカリストとしてのルークのカリスマ性の強さと確かにフレディ・マーキュリーに凄く似ているという事に強い衝撃を受けた。
特に象徴的なのが『Could Have Been Me』のPVだ。冒頭で素朴な庭師の青年として登場したルークは、勤め先の豪邸に忍び込み、何故かお嬢様の部屋でメイクを始めて、フレディ・マーキュリーそっくりのロック・ヴォーカリストに変貌して行く。
ルックスだけではない。その歌い方までフレディに良く似ている。シャウト気味に歌う所や巻き舌気味に歌う所等は最早鳥肌ものだ。勿論小手先だけでフレディの物真似をしている様なレベルではない。非常に力強く自然であり、フレディに影響を受けたにせよ、既にこれが彼自身のヴォーカルスタイルと言っていいレベルに完成しており、それもフレディ本人に勝るとも劣らない素晴らしいヴォーカルだ。
曲自体はことさらクィーンに似ている訳ではないが、序盤、中盤、終盤とアレンジが変化していく展開とか、コーラスの美しさにクィーンに通じるものを見る事が出来、全体としては60年代から現代に続く、ブリティッシュロックの伝統を引き継ぐ様な、60〜70年代のブリティッシュロックを彷彿とさせるものがありながら、現代的なテイストも感じさせるものなっている。
特に終盤のコーラスで感動的に盛り上がる部分は、何故か胸を締め付けられる様な切なさを感じさせるもので、単にカッコ良いだけではない、奥深さを感じさせる作品性の高い楽曲だ。
『'I Just Know'』も『Kiss This』も個性的で魅力的な楽曲であり、どの曲もタイプが異なる曲でありながら、どの曲にも既にストラッツらしさがしっかりとあるのが素晴らしい。
これらタイプの違う曲をルークはそれぞれ見事に歌いこなしており、時にはミック・ジャガーを思わされたり、時にはスティーブン・タイラーを連想させられたりする。やはり、過去の優れたロックバンド、ロックヴォーカリスト達からの影響を受けている事を感じさせられるが、それを見事に消化して既にルークらしさ、ルークの個性というものが確立されていると思う。
ルークには、フレディ・マーキュリー、ミック・ジャガー、スティーブン・タイラーといったロック界の頂点に君臨するロックヴォーカリスト達に匹敵する実力とカリスマ性、スター性が備わっていると感じる。必ずやいつか彼等と肩を並べる様なメジャーな存在となるに違いないと思う。
そして、ルークだけでなく、ストラッツは楽曲もサウンドも素晴らしく、ストラッツというバンド自体もビートルズ、クィーンに続く様なイギリスを代表する様なメジャーなバンドに成長するのではないかと思う。
ストラッツというバンドは、どの様に生まれたバンドなのか?僕の興味は益々募って行った。
ストラッツのFacebookページの基本データには、影響を受けたものとして「Beatles, Stones, Kaiser Chiefs, Oasis, Queen, Led Zep, AC/DC」が挙げられている。やはり幅広い年代のブリティッシュロックの影響を受けたバンドである事は間違いない様だ。
また、このページでは、昨年の記事と思われるルークのインタビューを読む事が出来るが、Chromeの翻訳機能に頼って読んでみた所、ストラッツは5年前にルークとギターのアダムとで始めたという事だ。また、曲もルークとアダムの二人が中心になって作っているらしい。
ルーク自身が最初に好きになったのはマイケル・ジャクソンでその後60年代70年代のロックを聴く様になったらしい。コラボしてみたいミュージシャンは?という質問には「レイ·デイヴィス、ジェフ·リン、ブライアン·メイ、ピーター·ドハーティ、ジミー·クリフ」と答えている。
ここで、クィーンのギタリスト、ブライアン・メイの名前を見て、非常に興奮してしまった。クィーンは現在、オリジナルメンバーはブライアン・メイとドラムのロジャー・テイラーの二人だけとなり、外部のヴォーカリストとコラボする事で活動を続けている。
クィーンの側から見れば、ルーク程フレディに近いヴォーカリストは他には存在しないだろうから、ルークがメジャーになれば、否が応でも目に止まるだろうし、ルークの方もコラボに異存がないとしたら、いつか Queen + Luke Spiller というコラボが実現するのも夢ではないかも知れない。
それは、僕の新しい夢になった。フレディ・マーキュリーという、最も特別なロック・ヴォーカリストを失ったという僕の喪失感を、Queen + Paul Rodgers も、Queen + Adam Lambert も埋める事は出来なかったが、 Queen + Luke Spiller は、フレディ存命当時のQueenの代わりにはならないとしても、その喪失感を多少なりとも薄めてくれる唯一の可能性があるコラボになると思う。今はただの夢に過ぎないが、将来の夢の実現に期待したい。
僕のストラッツ探求の旅は続き、YouTubeで2曲のLuke Spiller 名義の楽曲を発見した。
どちらも現在のストラッツの曲よりポップでアイドル路線的だが、『Sunnyside』のPVにはアダムの姿も映っており、ルークのソロ名義ではあるが、実質的にはルークとアダムによるユニットである事が伺え、ストラッツの前身と考えていいだろう。
おそらくは現在のイギリスではやはりストラッツの様なロックテイストの強いバンドは主流とは言い難く、ルークをソロでアイドルとして売り出す事を模索したのではないかと思う。この辺り、やはり時代遅れのグラムロックバンドと見られていたクィーンが中々デビュー出来なかった頃、ブライアンとロジャーのサポートを受けて、フレディがラリー・ルレックス名義でアイドル路線のソロシングルをリリースしているのと重なる面があり興味深い。
そして、更に検索して、ルークとアダムのユニットは実は思った以上に古くから存在していた事が判明する。 Adam Slack & Luke Spiller 名義でカセットで宅録されたと思われる古い音源が多数見つかったのである。
Adam Slack & Luke Spiller 名義の音源をアップしているYouTubeチャンネル
音源にはルークとアダムの演奏シーンの写真を貼付けた動画でアップされているが、その写真の二人はかなり若く見え、ほとんどの写真は中高生位に見えるが、中には小学生位に見える程幼いものもあり、ルークとアダムが幼なじみで、かなり幼い頃から一緒に音楽を始めたのが伺える。
これはかなり微笑ましい貴重な音源だと思う。個人的にはストロオズの音源を最初に聴いたのはカセットテープだったので、その時の衝撃を思い出し、この音源を大事に取っておいてYouTubeにアップした人の気持ちがよく理解出来る気がした。
僕は当時ストロオズの二人の事を「恐るべき子供たち」だと感じた。若かりし頃のルークとアダムの音源を手に入れた人も同じ様に感じたのではないだろうかと思う。
それに日本でもイギリスでも音楽に目覚めた若いミュージシャンの卵がする事はあまり変わらないと思うと感慨深いものがある。
そして、その中にはストーンズのJumpin' Jack Flashをカヴァーした音源もあった。彼等が幼い頃から60年代のロックを聴き影響を受けていた事が分かる。
そして、ストラッツとして活動する様になっても、彼等はライブでJumpin' Jack Flashをレパートリーにしている様だ。
また、こちらのライブ映像では後半でビートルズのカヴァーで有名なTwist And Shoutもカヴァーしている。
彼等がどういう環境で育ったのかは分からないが、イギリスでは現在でもストーンズやビートルズの人気は高いのだろうと思うし、クィーンについても同様なのだろう。彼等はそれらの60年代70年代のロックも最近の音楽も同列のもとして聴いて育ち、どちらかと言うと最近の音楽よりも60年代70年代のロックを好み、影響を受けて伝統的なブリティッシュロックの伝統を引き継ぎながら、現代的な感覚も兼ね備えた、極めて魅力的で個性的なバンドに成長したのだと思う。
YouTubeのストラッツの公式チャンネルには、彼等が最近のヒット曲をカヴァーしたビデオが何曲かアップされているが、どれもストラッツ流に料理されていて見事なカヴァーだと思う。
また、現在は『Kiss This EP』もリリースされ、EPに収録された『Matter of Time』に加えLordeのカヴァー曲『Royals』のPVも公開されているが、これらも素晴らしい。特に『Royals』のPVはいかにもイギリスのロックバンドらしいPVになっていて、曲もまるで彼等のオリジナル曲の様に聴こえる程だ。
そして、『Kiss This EP』は現在日本のiTunes Storeでも購入可能になっている。
日本ではまだまだ知名度は低いストラッツだが、Twitterのアダムのつぶやきによれば、アルバムリリースはもう間もなくという事だ。
また、アルバムリリースを控えたプロモーションを兼ねていると思われるファンを集めてのPV撮影のイベントが5月7日に企画されている。
本国イギリスでは、今正にブレイクに向けて動き始めているという感じのストラッツだが、個人的には近いうちに世界的にメジャーなバンドになるに違いないと確信している。これからも彼等の動向に注目して行きたい。
*このエントリ投稿後、数少ないストラッツファンから反響があった事から、ストラッツの日本語情報サイトの必要性を感じ、ストラッツの非公式日本語情報blog The Struts News of Japan を開設しました。
もし、ストラッツファンの方がこのエントリをご覧になったのなら、是非アクセスしてみて下さい。
ストラッツ非公式日本語情報blog:The Struts News of Japan
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by ko1kubota
| 2014-05-06 01:55
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